実際に対応したケースの紹介
- hirano34
- 2月12日
- 読了時間: 10分
更新日:2月27日
はじめに
実際に相談されたケースについて、いろいろとぼやかして
個人が特定されないようにしつつ、対応の実際を示します。
兄弟のいる中学~高校生の男子だと思ってお読みください。
相談を受けるまで
① 保育園入園まで
特に気になることは無かった。
② 保育園卒園まで
保育園での個人懇談の時に、運動面と精神面について、発達相談を勧められた。
発達検査(WISCIII*)では IQ 80 で、注意記憶 < 処理速度 と差を認めた。
その後、小学校に進学し、支援級通級対応となった。
(支援級利用のために)、自閉症の診断がついた。
③ 小学校低学年
小学校1年生は調子よく過ごしていた。
2年生以降は・・・あまり良くなかった。
板書が苦手で、連絡帳などをなぞるなどの対応は受けていた。
小学校低学年の時の発達検査(WISCIV*)では、IQ 90 だった。
課題に応じる姿勢はあるが、注意持続が短く、集中して取り組みことが困難。
「1から5まで数えて」に対して「5」と答えるなど、
言語教示に対しての理解の弱さや、単語の意味の言葉での説明が苦手。
文章を聞いて計算する課題では、指を使用してとりくむ、言語教示を復唱するなど、
忘れないよう工夫している様子がみられた。
視覚補助やメモなどの重要性、10-15分程度での1stepのスモールステップでの課題設定と
達成感の醸成などが勧められた。
④ 小学校高学年
「書く事が疲れる」といった発言があり。
視機能の評価を受けたが、特に問題は無かった。
文章題になると途端に解けなくなるようだった。
小学校高学年の時の発達評価では、IQ 80 だった。
経験を通して知識やルールを獲得できている
語彙が少ない(意味や本質、周辺情報などの理解が十分に伴っていない)
抽象的な概念の理解、統語や順序だて、俯瞰しての把握の弱さを認める
目についたところだけに注目してしまい、情報を保持しながらの作業が難しい
イラストを利用した言語理解、形以外の手がかりの活用、情報量の調整などが勧められた。
⑤ 中学生
学校側の都合もあり(教科別での人員配置など)、入学時に手帳取得を勧められた。
結局取得はせず、支援級も本人が利用を拒み、ほぼ利用しなかった。
部活動や友人関係での困り感はほとんど無いが、学校の授業が嫌で不登校になった。
部活は中心選手ではないものの、継続して取り組んでいる。
週5で活動しており、大会などにも出場していて、高校でも続けたいと考えている。
学業成績は試験は全て赤点。
学校については、担任教師との関係性はそこまで良くないが、
陸上の顧問との関係はまずまず良い、とのことだった。
この状況で、なんとかしてくれ!と、相談がありました。
*おまけ 発達検査について

いずれの検査も、知能を客観的に測定するための心理検査です。
18世紀後半~19世紀、近代化に伴い、教育心理学が発展し
学習に遅れがみられる生徒に対応するため、客観的な検査結果が得られるよう
標準化され、開発されたものです。
他の同年齢の児と比較してどの程度か「個人間差」に加えて、
個人の中での得意不得意の差である「個人内差」も評価できます。
各々の検査によって、守備範囲が異なります。
個人的には、新版K式、WISCで評価していることが多いです。
多くの検査は改訂されていて、例えばWISCの最新バージョンは「V」になっています。
相談を受けてから
世知辛い話から始めると、保険診療では本人が来ないと基本的にコストがとれません。。
(オンライン診療など、すべてのケースがそうではありません、念のため)
ただ、こういったケースでは、
本人が診察に来てくれたら治療の3割、いや5割くらいはすすんでいる
と自分は捉えています。
初回はお母さんと1-2時間お話して、問題点の整理とアドバイスをおこないました。
支援級はあるが、利用できていない
→ 本人にとって、利用するメリットがないように感じているのでは?
長時間学校にいるのがつらい、となって不登校になっている
→ もう少し「つらい」内容を詳しくみる必要がある。
まわりと同じようにしたい、という本人の思いが強い
→ 本人の自分自身についての評価を、確認する必要がある。
診察した側としては、発達の評価やその分析、そして対応については、
そこまで外した対応ではないと感じました。
ただ、お母さん自身は次のように懺悔されました。
初めてやることに対しては、小さい時から、「どうなるの」「どれくらいかかるの」とよく聞いていた。コツをつかむのが遅いな、とは感じていた。
上の子と比べて、もっと勉強させないと、と焦っていたとも思う。
マスがあったら書けるが、はねなどにこだわりがあり、理想は高いように思う。
どこに注目して良いかわからなさそうで、「わからないことが怖い」と言っていた。
周りとの差が大きくなって、「できない」んじゃなくて、「やらない」と見せていそう。
少し無理させてしまっていたのかな。
そしてお母さんのがんばりもあり、数か月後に本人が診察を受けてくれました。
本人とのやりとりを、診察に近い形で記載しています。
Q)今日は何か困っていることがあって来た?
とりあえず来た。勉強で困っている、人間関係では困っていない。
Q)自分が勉強できないことについて、どうしてだと思っている?
わからない。(何度か質問を重ねると) 発達障害とは思っていない。やっても意味ないから諦めている。なんでかわからない。
Q)何か病気があって、そのせいで勉強ができていない、と考えている?
それはそう思う。
Q)じゃあどれくらい病気のせいで、どれくらいは他のせいだと思っている?
90%は病気、10%くらいはサボっている。
Q)今までで勉強に関係して一番嫌だったエピソードはある?
中学校1年生の時、週5で2か月塾に通ったけど、学校の試験で全部赤点だった。
Q)その時に、もう少しなんとかできたかも、って思っていることはある?
ゲームの時間を減らしたら、もっとできたかも。
Q)今、いちばん苦しい事は何だろう?
勉強が一番苦しい。
Q)10度階 (0は平気、10は死んじゃう) にしたら、どれくらい困っている?
7くらいで困っている。
Q) 将来、どうなりたい?
どうなりたい、というのはなくて、わからない。
Q)じゃあ、中学卒業した後はどうしたい?
学校の友人らと同じ高校に行きたい。
Q) もしかして、家族を悲しませたくない、恥ずかしいとこ見せられないって思って、 今まですごく頑張ってた?
無言で少しうなずいていました。
とても優しい、ナイスガイですよね。
その他、
「部活をしている時が一番楽しい(勉強のことを考えなくて良い)」
「ゲームの技は覚えられるけど、勉強や試験では覚えておけない」
といったことも教えてくれました。
本人への聞き方、接し方には手法がいくつかあります。
エビデンスがあるものや、ちょっと怪しいものまで・・・
さすがにその解説はしませんが、私もまだまだうまくないです。
ここまで偉そうに書いておいてなんですが、こういったケースに対しては
私は 医学(小児科学) < 心理学 の分野の知識が必要だと考えています。
腕利きの心理士さんの方が、匠のワザをお持ちです。
私ができるのは、こうやって話を聞いて、どうしたら良くなるか、
一緒に悩んで考えるくらいですが、それで良いとも思っています。
言葉に出して、悩み相談するだけで気が軽くなる、というのはよくあります。
目指しているのは、学生時代の昼休みや放課後にダベって話す、あの感じです。

実際にしたアドバイス
今までに指摘されている
・ 視覚補助やメモなどの重要性
・ 10-15分程度での1stepのスモールステップでの課題設定と達成感の醸成
・ イラストを利用した言語理解、形以外の手がかりの活用、情報量の調整
これらの内容は間違いではありませんが、実現できていたのかは再評価が必要です。
実際のアドバイスを書く前に、一番大事なことを。
「お前の育て方が悪い!!」 なんて責める人は、すぐに靴ひもがほどけてしまえ!
説明が無く急すぎました。
今回のケースで、お母さん自身も、少し勉強を強いすぎた、と反省をされていました。
いわゆる「毒親」までいかなくても、子育てでの失敗なんて、あって当たり前です。
孔子の論語の一説に 「過ちては即ち改むるに憚ることなかれ」 という言葉があります。
自分は「ありがとうとごめんなさいは、遅くなっても言おう」と意訳しています。
間違ったことを訂正するのにためらってはいけないよ、というのが直訳になるのでしょうが
人間、ためらったり、言えなかったりすることがほとんどです。
子育ての責任をとる。
そんな考え方があるとすれば、責められることを耐え忍ぶ、とは異なります。
自分の考えたこと、こどもが感じたこと。整理して、感謝して謝って、一緒に歩む。
料理研究家の土井善晴さんの、一汁一菜でよいというコンセプトから拝借するなら
がんばりすぎない、けれどホッとする。それくらいの心持ちで良いと私は思っています。
脱線したので、話を戻します。
・ASD(自閉症)の診断について
支援などを得るための実務的な経緯があるため、診断をとやかくは言いません。
本人とのやりとりからは、コミュニケーションや対人関係で大きなトラブルはなく過ごせていました。そのため、中学生の段階では、典型的な自閉症(医学的には中核群、と呼びます)では無いと考えました。
医学的には、
境界域の知的障害(いわゆるボーダーライン) + 適応障害(自分と周囲の環境がうまく適応できていない)
という状態が、本人を説明するものだと評価しました。
・学習について
タブレットで板書を撮影するにも、何のために撮影しているのか?がおざなりになっているかもしれません。周囲との違いに対する、心情的な要素はもちろんあると思いますが、
配慮の効果や理由に対する、本人の理解や納得感が低い可能性が高いです。
背景にある「注目のしにくさ」については、どこに注目するかという練習は、高校受験や その後の生活を見据えても、練習した方がよいです。
受験の一部はテクニックです。個別指導や家庭教師などで、学校の授業の先取りではなく、宿題や課題を何とか仕上げつつ、わからないところをつぶしていく、という形を勧めます。
進路について、具体的に学校と相談し、進学するためにはどういった事が必要か
もし、かなり難しいようなら、代替としてどういった進学先がありえるか
これらを把握することで、本人の目標設定や、現状を改善するための材料になります。
・本人との関わり方について
学校で、「ぼーっとしてたり、外を見て授業に集中していないと注意された」
というエピソードは、確かに本人にも非はあるかもしれません。
が、何を話しているかわからない外国語の話をずっと聞けないのと同じで、
本人が理解できる、理解しようと思える環境を作る必要はあります。
また、本人の中で、がんばった努力があまり評価されなかった経験があると考えます。
人種差別などと並べるには誇張しすぎかもしれませんが、
白人でないことで、所定の食事場所がある、バスに乗れない といった
日常の小さな差別 ( microagression ) のように、小さなマイナスが積み重なった結果、
自己効力感や自己育定感が削られていると思われます。
同じような状況のお子さんで、家庭環境が悪ければ、もっとスれています。
ですが、ナイスガイを保てているのは、今までの良好な家庭環境があったからです。
小さなマイナスの積み重なりを逆転させるため、小さなプラスを積み重ねましょう。
ささいな事でも褒めることは重要ですし、失敗しても良いからやってみたら?と
少し遠くから見守る姿勢も必要です。(ほめるに関してはこちらの記事で触れてます)
つかず離れず。
このバランスは、どのご家庭でも悩ましい問題ですが
本人と話す時間を継続して持つことは必要です。
成績の絶対値では叱責せず、前回からの変化でどうか。
必ず良い部分があるはずなので、そこを見つけることが大事です。
おわり

今回も長丁場でした。
年末年始、節分などイベント盛りだくさんで
中々ここまで手が回りませんでした。
今回のお酒 LAGAVULIN ラガブーリン
アイラ島のスモーキーなウイスキー
実はこの蒸留所の昔々のオーナーは、
ニッカの竹鶴さん(マッサン)を迎え入れた方。
スマホやゲーム依存について有料資料ができました。
ご興味がある方は、Dr モルト|note
をご覧ください。
発達障害については別で準備するつもりです。


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